TinyGo 0.26 + Wio Terminal という組み合わせで技術書「基礎から学ぶ TinyGoの組込み開発」 (2022/11/12 発売) を執筆しました。本ページと合わせて確認してみてください。
このページは 2024/08/04 からスタートする TinyGo Keeb Tour 2024 用の記事です。 不明点はこのリポジトリの Issue や twitter:sago35tk で質問いただければサポートします。
以下のインストールが必要です。 TinyGo については、このページの記入時点の最新版である v0.27.0 の URL を記載しましたが、このハンズオンでは後述する dev branch 版 (開発最新版) を使うことを推奨します。
- Git
- Go
- TinyGo
それぞれの実行体に PATH が通っていれば使うことができます。 少し Version が古いですが以下も参考になると思います。
開発中の最新 Version を使いたい場合、 GitHub Actions でビルドされた Artifact > release-double-zipped をダウンロードしてください。
- windows
- linux
- macos
詳細は以下を参照してください。
TinyGo は、 machine package などを GOROOT に配置しているため設定を行うまでは gopls 等でエラーが表示され machine.LED の定義元へのジャンプ等が出来ません。 TinyGo は machine package など (Go を良く知っていても) 慣れていない package 構成であったり、 build-tag による分岐などが多いため TinyGo 用の LSP の設定をしておいた方が無難です。
公式ドキュメントは以下にあります。
VSCode の場合は TinyGo という拡張をインストールすると良いです。 Vim (+ vim-lsp) の場合は github.com/sago35/tinygo.vim を使ってみてください。
日本語の情報としては以下に記載しています。
TinyGo Keeb Tour 2024 では zero-kb02 という自作キーボード/マクロパッドを使用します。 マイコンは RP2040 (Cortex M0+) で、マイコンボードは Waveshare RP2040-Zero を使用しています。
主な機能は以下の通りです。
- Waveshare RP2040-Zero
- RGB LED 付きの 12 キー
- マウスカーソルの移動などに使用できる 2 軸アナログジョイスティック
- ロータリーエンコーダー
- 有機 EL ディスプレイ (OLED) - 128x64 単色
- GROVE コネクター
- 背面 2x6 ピンソケット
回路図等は以下から確認することができます。
はんだ付け等の手順はビルドガイドにて。
- ビルドガイド (作成中)
TinyGo ではコマンドラインからビルド+書き込みを行うことができますが、ここでは手動での書き込み方法を学びます。
RP2040 搭載のボードは BOOT / BOOTSEL と呼ばれているボタンを押しながらリセット (リセットボタンを押す、 USB に接続する、等) をすることでブートローダーに遷移することができます。
ブートローダーに遷移すると PC からは外付けドライブとして認識するので、あとは書き込みたいバイナリファイル (*.uf2) を D&D などでコピーすることで書き込みできます。
ここでは以下を書き込みしてみてください。
キースイッチ部の LED が光っていたら書き込み成功です。
まずはキースイッチを刺さるように刺していきます。
先ほど書き込んだ 00_basic.uf2 はキーが押下されているとその箇所の LED が光るようになっています。
うまく光らない場合は、一度取り外して正しく差し込まれているか確認してください。
以下を実行してください。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./01_blinky1/無事に RP2040 Zero の RGB LED が光ることが確認出来たらソースコードを変更して色や点滅速度を変えてみましょう。
以下の black や white のところに color.Color を設定することができます。
for {
time.Sleep(time.Millisecond * 500)
ws.PutColor(black)
time.Sleep(time.Millisecond * 500)
ws.PutColor(white)
}キーを光らせてみましょう。 基板には WS2812B 互換の SK2812MINI-E が 12 個搭載されています。 以下の位置/順番で搭載されています。
0 3 6 9
1 4 7 10
2 5 8 11
以下を実行してください。 無事に動いたらソースコードを変更して色や点滅速度や点滅パターンを変えてみましょう。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./02_blinky2/先ほどとほとんど同じですが、 PutColor() の代わりに WriteRaw() が使われています。
ここで colors[0][:i+1] という指定をしていますが、 [:1] という指定の場合は最初の LED のみ設定して終了となります。
[:4] だと合計 4 個の LED を変更します。
ws.WriteRaw(colors[0][:i+1])WriteRaw() は uint32 で色を指定することができます。
最上位から 8 bit ずつ Green / Red / Blue という形で値を設定します。
例えば以下のようになります。
colors := []uint32{
0xFFFFFFFF, // white
0xFF0000FF, // green
0x00FF00FF, // red
0x0000FFFF, // blue
}Printf デバッグなどにも使えるし何かと使いどころのある USB CDC も実行しておきましょう。
USB CDC は Universal Serial Bus Communications Device Class の略で、雑な説明としてはパソコンとマイコン間で通信を行うためのものです。
説明するよりも実際に試したほうが分かりやすいので、まずは以下を実行してみてください。
--monitor というオプションを追加する必要があります。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor examples/serialWindows で実行すると以下のようになります。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor examples/serial
code data bss | flash ram
7836 108 3152 | 7944 3260
Connected to COM7. Press Ctrl-C to exit.
hello world!
hello world!
hello world!
(以下省略)
examples/serial は以下のようなソース (./03_usbcdc-serial) です。
hello world! を表示してから 1 秒待つ、を繰り返しています。
こちらも待ち時間や、表示文字列の変更、あるいは fmt.Printf() を使った書き込み、などに変えてみてください。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor ./03_usbcdc-serial/標準入力は以下のようなソース (./04_usbcdc-echo/) で扱うことができます。
package main
import (
"bufio"
"fmt"
"os"
)
func main() {
scanner := bufio.NewScanner(os.Stdin)
for scanner.Scan() {
fmt.Printf("you typed : %s\n", scanner.Text())
}
}tinygo-org/drivers にある encoders/quadrature を使うことができます。
zero-kb02 用に設定を合わせたものは以下の通りです。
enc := encoders.NewQuadratureViaInterrupt(
machine.GPIO3,
machine.GPIO4,
)
enc.Configure(encoders.QuadratureConfig{
Precision: 4,
})
以下のコマンドで書き込み、動作確認が可能です。 ロータリーエンコーダーを動かすと value の表示が更新されます。 LED と連動させてみたりすると面白いでしょう。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor ./05_rotary/
code data bss | flash ram
8276 108 3624 | 8384 3732
Connected to COM7. Press Ctrl-C to exit.
value: -1
value: -2
value: -1
value: 0
value: 1
value: 2
(以下省略)
なおロータリーエンコーダーは押下するとボタンとして扱うことができます。 ロータリーエンコーダーの押下状態の取得については後述します。
ロー5アリーエンコーダーを押下すると GND と接続されて Low になります。 (プルアップしておけば) 押下していない状態では High になります。
基本的には以下のようなコードになります。
if !btn.Get() {
println("pressed")
} else {
println("released")
}$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor ./13_rotary_button/アナログジョイスティックは押し込みでデジタル値として、 XY の二軸に対してはアナログ値として認識されます。 なので以下のように扱うことができます。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor ./06_joystick/
code data bss | flash ram
56792 1536 3176 | 58328 4712
Connected to COM7. Press Ctrl-C to exit.
7440 8000 false
7130 7F90 true
(以下省略)左から X 軸値 (電圧を表す値)、 Y 軸値、押し込んだかどうか、を表します。 何もしていないときは 0x8000 に近い値が表示されます。
tinygo-org/drivers にある ssd1306/i2c_128x64 を使うことができます。
zero-kb02 用に設定を合わせたものは以下の通りです。
machine.I2C0.Configure(machine.I2CConfig{
Frequency: machine.TWI_FREQ_400KHZ,
SDA: machine.GPIO12,
SCL: machine.GPIO13,
})
display := ssd1306.NewI2C(machine.I2C0)
display.Configure(ssd1306.Config{
Address: 0x3C,
Width: 128,
Height: 64,
})以下のコマンドで書き込み、動作確認が可能です。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./07_oled/$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./08_oled_tinydraw/$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./09_oled_tinyfont/zero-kb02 では OLED を上下逆に取り付けているのでソフトウェアで画面を回転させる必要があります。 画面描画は原則として以下の Displayer interface に対応しているので、画面を回転できる Displayer を定義します。
// https://github.com/tinygo-org/drivers/blob/release/displayer.go
type Displayer interface {
// Size returns the current size of the display.
Size() (x, y int16)
// SetPizel modifies the internal buffer.
SetPixel(x, y int16, c color.RGBA)
// Display sends the buffer (if any) to the screen.
Display() error
}ここでは以下を定義しました。 struct に Displayer を埋め込み SetPixel の x および y の値を加工しています。
type InvertedDisplay struct {
drivers.Displayer
}
func (d *InvertedDisplay) SetPixel(x, y int16, c color.RGBA) {
sx, sy := d.Displayer.Size()
d.Displayer.SetPixel(sx-x, sy-y, c)
}$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./10_oled_inverted/display.ClearBuffer() と display.Display() を用いることでちらつきなく画面を書き換えることができます。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./11_oled_animation/zero-kb02 は matrix と呼ばれる配線方法を使ってキーが接続されています。 下記の回路の通り 12 個のスイッチを COL:4 x ROW:3 の 7 ピンで取得する形です。
どのように読み取るか、というと以下のようになります。
- COL1 のみ High にして、それ以外の COL2 ~ COL4 を Low にする
- 少し待つ
- その状態で ROW1 ~ ROW3 を読み取る
- ROW1 が High になっているなら SW1 が押されている
- ROW2 が High になっているなら SW5 が押されている
- ROW3 が High になっているなら SW9 が押されている
次に COL2 のみ High にすれば SW2 / SW6 / SW10 を読み取り可能、となります。
matrix 配線は自作キーボードで広く使われている接続方式なので、一度実装してみましょう。 上記を素朴に実装すると以下のようになります。
colPins[0].High()
colPins[1].Low()
colPins[2].Low()
colPins[3].Low()
time.Sleep(1 * time.Millisecond)
if rowPins[0].Get() {
fmt.Printf("sw1 pressed\n")
}
if rowPins[1].Get() {
fmt.Printf("sw5 pressed\n")
}
if rowPins[2].Get() {
fmt.Printf("sw9 pressed\n")
}同じように実装していくことですべてのキーの押下状態を取得できます。
$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short --monitor ./12_matrix_basic/ループを整理したり、キー数を可変にしたりすることで、キーボードファームウェアに近づいていきます。
ロータリーエンコーダーの押下状態を使って USB HID Keyboard を作ってみましょう。
以下のコードにより押下状態と A キーを連動させることができます。
TinyGo では machine/usb/hid/keyboard を import して keyboard.Port() をコールするとキーボードとして認識させることができます。
kb := keyboard.Port()
for {
if !btn.Get() {
kb.Down(keyboard.KeyA)
} else {
kb.Up(keyboard.KeyA)
}
}$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./14_hid_keyboard/ロータリーエンコーダーの押下状態を使って今度は USB HID Mouse を作ってみましょう。 以下のコードによりボタンの押下がマウスの左クリックになります。
m := mouse.Port()
for {
if !btn.Get() {
m.Press(mouse.Left)
} else {
m.Release(mouse.Left)
}
}$ tinygo flash --target waveshare-rp2040-zero --size short ./15_hid_mouse/自作キーボードに必要な要素、というのは人によって違うと思います。 しかしその中でも
- レイヤー機能
- ビルドしなおすことなく設定変更できる
- 各種スイッチ読み取り方法が package になっている
というあたりが必要なことが多いです。 そのあたりを毎回自前で作成するのは大変なので、何らかのライブラリなどを使うことが多いと思います。 ここでは、拙作の sago35/tinygo-keyboard を使って自作キーボードを作っていきましょう。
sago35/tinygo-keyboard を使うと以下のような機能を簡単に導入することができます。
- 様々な方式のキー入力 (matrix や GPIO やロータリーエンコーダーなど) に対応
- 自分で拡張を書くことも可能
- レイヤー機能
- マウスクリック、ポインタ移動との統合
- TRRS ケーブルによる分割キーボードサポート
- Vial による Web ブラウザ経由での書き換え
- キーマップ
- レイヤー
- matrix tester (キースイッチの押下テスト)
- マクロ機能
特に Vial での書き換えが重要であり、これにより各自の好みの設定に変更しやすいです。 Vial は以下にあり、 WebHID API に対応した Edge / Chrome などからアクセスすることで設定変更が可能です。

