swift-ac-collections は、AtCoderでの利用を想定したデータ構造等のオープソース・パッケージです。
Package.swift の dependencies に以下を追加してください:
dependencies: [
.package(
url: "https://github.com/narumij/swift-ac-collections",
branch: "main"),
]さらに、ビルドターゲットに以下を追加します:
dependencies: [
.product(name: "AcCollections", package: "swift-ac-collections")
]ソースコード上で以下を記述してインポートできます:
import AcCollectionsAtCoder2025ジャッジと同一のものをご要望の場合は以下をご利用ください。
dependencies: [
.package(
url: "https://github.com/narumij/swift-ac-collections",
branch: "release/AtCoder/2025"),
]本モジュールでは平衡二分探索木の一種、赤黒木(Red-Black Tree)を用いたコンテナを提供しています。 具体的には以下で、それぞれ、C++のstd::set, std::multiset, std::map, std::multimapに相当します。
- 重複なし の要素を管理する Set。
- 要素の挿入・削除・探索を平均的に
O(log n)で行えます。 Collectionに適合しており、インデックスによる要素アクセスやstartIndex/endIndexなどが利用可能です。- 境界探索メソッド(
lowerBound/upperBound)なども提供しています。 - 使用例: AtCoder 提出例 (ABC370D) / AtCoder 提出例 (ABC385D) など。
- 重複あり の要素を管理する MultiSet。
count(_:)により、特定の要素が何個含まれるかを取得できます。- その他の特性や使い方は
RedBlackTreeSetに準じます。 - 使用例: AtCoder 提出例 (ABC358D) など。
- 重複なしのキーと値 の要素を管理する Map。
- 基本的なキー検索・挿入・削除などの操作を
O(log n)で行えます。 - 連想配列リテラル(
ExpressibleByDictionaryLiteral)にも対応しています。 - RedBlackTreeDictionaryと異なり、KeyValueが構造体となっています。
- AtCoder 2025未搭載です
- 重複ありのキーと値 の要素を管理する Map。
count(forKey:)により、特定キーの要素が何個含まれるかを取得できます。- MultiSetやDictionaryをベースに、なるべくSwiftに寄せたAPIとなっています。
- AtCoder 2025搭載版と異なり、KeyValueが構造体となっています。
- キーと値 を管理する Dictionary。
- 基本的なキー検索・挿入・削除などの操作を
O(log n)で行えます。 - 連想配列リテラル(
ExpressibleByDictionaryLiteral)にも対応しています。
import AcCollections
// RedBlackTreeSet の例
var set = RedBlackTreeSet<Int>()
set.insert(10)
set.insert(5)
set.insert(5) // 重複は無視される
print(set) // 例: [5, 10]
print(set.min()) // 例: Optional(5)
// RedBlackTreeMultiSet の例
var multiset = RedBlackTreeMultiSet<Int>([1, 2, 2, 3])
multiset.insert(2)
print(multiset) // 例: [1, 2, 2, 2, 3]
print(multiset.count(2)) // 例: 3
// RedBlackTreeDictionary の例
var dict = RedBlackTreeDictionary<String, Int>()
dict["apple"] = 5
dict["banana"] = 3
print(dict) // 例: [apple: 5, banana: 3]
// RedBlackTreeMultiMap の例
var multimap = RedBlackTreeMultiMap<String, Int>()
multimap.insert(key: "apple", value: 5)
multimap.insert(key: "apple", value: 2)
multimap.insert(key: "banana", value: 3)
print(multimap) // 例: [apple: 5, apple: 2, banana: 3]赤黒木モジュールの各データ構造は木のノードを配列に格納しています。 この内部配列のインデックス同士を比較した場合、順序と結果が一致しません。
Swift標準のプロトコルではインデックス比較と順序の一致を要求するため、抽象化されたインデックスを用いています。
これがIndexです。実際的にはC++のイテレータのような働きをします。
赤黒木モジュールの大半のAPIではこの抽象化されたIndexを用いています。
単なるIntによるIndexとは異なることに注意してください。
- indicesプロパティはIndexのシーケンスを返します。
削除操作を行うことで、対象のノードは内容がクリアされ、再利用管理リンクリストの一部となります。
削除されたノードを指すインデックスは単純に無効となります。
範囲削除を行う際は、この挙動には十分に注意を払う必要があります。
-
削除されたノードへの参照を使い続けると、クラッシュします。
-
有効無効の確認が必要な場合、isValid(index:)を使ってください。
-
endIndexは例外で、内部的インデックスが常に不変です。
各種サブシーケンスやイテレーターには削除対策が施されています。このため、これらはほぼ問題なく範囲削除に利用できます。
- 普通に削除する
この問題を迂回しない楽な使い方です。 紆余曲折のすえに、安定してできるようになりました。
IndexをStridableにした場合とても遅かったのですが(1要素毎にO(log n)等)、 イテレータやシーケンスに別途用意したモノを利用することで速度を稼いでいます。
..< 演算子は通常Rangeを生成しますが、型推論次第で別のシーケンスとなります。
つまり、削除対策済みのシーケンスやイテレータに置き換わるため、意識せずに使えます。
var tree0: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
for i in tree0.startIndex ..< tree0.endIndex {
tree0.remove(at: i) // iはこの時点で無効になる
print(tree0.isValid(index: i)) // false
}
print(tree0.count) // 0var tree0: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
for i in tree0.indices {
tree0.remove(at: i) // iはこの時点で無効になる
print(tree0.isValid(index: i)) // false
}
print(tree0.count) // 0var tree0: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
for i in (tree0.startIndex ..< tree0.endIndex).reversed() {
tree0.remove(at: i) // iはこの時点で無効になる
print(tree0.isValid(index: i)) // false
}
print(tree0.count) // 0var tree0: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
for i in tree0.indices.reversed() {
tree0.remove(at: i) // iはこの時点で無効になる
print(tree0.isValid(index: i)) // false
}
print(tree0.count) // 0対策済みのシーケンスやイテレータから外れた使い方をする場合、 このあとの1~5のいずれかが役に立つと思います。
- 削除の前に次のインデックスを取得する
この問題を迂回する、ベーシックな方法です。対策済みイテレータも内部で同じ事をしています。
var tree: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
var i = tree.startIndex
while i != tree.endIndex { // endIndexは不変
let j = i
i = tree.index(after: i)
tree.remove(at: j) // jはこの時点で無効になる
print(tree.isValid(index: j)) // false
}
print(tree.count) // 0- 特殊なforEachで削除する
インデックスと値でループでき、これを削除操作に利用できます。 削除以外に何か処理が必要な場合に使います。たとえばABC385D等。
var tree: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
tree[tree.startIndex ..< tree.endIndex].forEach { i, e in
tree.remove(at: i)
print(e) // 各要素
print(tree.isValid(index: i)) // false
}
print(tree.count) // 0- removeSubrange(_:Range
<Index>)で削除する
インデックスの区間で削除対象を指定することが可能です。 基本的にループを回すよりも、この方法で消す方が実行速度としては(定数倍の面で)速いです。 計算量としては余り変わりません。
var tree: RedBlackTreeSet<Int> = [0,1,2,3,4,5]
tree.removeSubrange(tree.startIndex ..< tree.endIndex)
XCTAssertEqual(tree.count, 0)- remove(contentsOf:Range
<Element>)を使用して削除する。
値の区間で削除対象を指定することが可能です。 境界を探索する分すこし実行時間はかさみますが、これも速いです。
var tree: RedBlackTreeSet<Int> = [0, 1, 2, 3, 4, 5]
tree.remove(contentsOf: 0 ..< 6)
// 0〜5が削除され、結果は空- erase()を自作して削除する
C++のsetと同じような削除コードを書くことも可能です。
extension RedBlackTreeSet {
mutating func erase(at position: Index) -> Index {
defer { remove(at: position) }
return index(after: position)
}
}
var tree: RedBlackTreeSet<Int> = [0, 1, 2, 3, 4, 5]
var idx = tree.startIndex
while idx != tree.endIndex {
idx = tree.erase(at: idx)
}x. 比較演算子の計算量がO(1)ではないためおすすめできませんが、比較でループを回すこともできます。
var tree: RedBlackTreeSet<Int> = [0, 1, 2, 3, 4, 5]
var idx = tree.startIndex
while idx < tree.endIndex {
idx = tree.erase(at: idx)
}エレメント指定による複数削除ではコピーオンライト判定が強めに設定されています。
RedBlackTreeMultiSetのremove(:)や、その他コレクションのremove(contentsOf:)等。
使い方次第では全体コピーが繰り返し発生してしまう場合もあります。
これを避けるには、イテレータやサブシーケンスやインデックスなどが削除時点で消費済みとなっていることが望ましいです。
var multiset: RedBlackTreeMultiSet<Int> = [0,0,1,1,2,2]
for member in multiset {
// この時点でイテレータが有効で、イテレータの破壊を予防するために内部コピーを行う
// この場合、1回内部コピーが行われる
multiset.remove(member)
}var multiset: RedBlackTreeMultiSet<Int> = [0,0,1,1,2,2]
for member in multiset.map({ $0 }) {
// イテレータが消費済みなため、コピーが発生しない
multiset.remove(member)
}インデックスによる範囲削除にはこういった対策ができない事情があります。インデックスの無効化には十分ご注意ください。
標準コンテナとの比較やSTLとの比較で漏れを潰していて未実装に気付いたため用意しました。 このコンテナを対象とする問題を知らないため、AC実績もなく、APIやチューニングが甘い状態ですが、ここまでの他のコンテナをベースとしてるため、そこそこの性能には仕上がっています。 辞書がマルチセットに退化したようなAPIとなっており、キーアクセスでの返却がサブシーケンスなこととあわせて、辞書と思うと絶望的に使いにくいものとなっています。 現状、lowerBound, upperBound, equalRange, indices, enumeratedを駆使して使う必要があります。
import AcCollections
for p in [1,2].nextPermutations() {
print(p.map{$0})
// [1,2]
// [2,1]
}これの何が嬉しいかというと、辞書順での残りを列挙します。終了条件はソート済みと変わらない並びとなることで、その直前までが出力されます。
ABC328Eという問題がありまして、C++で書かれた解説コードを読んだとき、C++はこの問題を力尽くで計算できると1年ぐらい勘違いしていました。そうではなく、辞書順の変化だけを行うnext_permutationsの挙動が理由で、組み合わせ数が減っていたために計算可能だったようです。
28!を2秒で用意できるかどうかはライブラリの問題では無く、そもそも論でした。
勘違いの結果、オーバーヘッドが少ない実装を追い求め、結果としてとても軽量な実装を生み出すこととなりました。おまけでunsafePermutationsとunsafeNextPermutationsというものもありますが、コピーオンライトをキャンセルして行わない動作となっています。
「アンダースコア付き宣言」は、完全修飾名のどこかにアンダースコア (_) で始まる部分が含まれる宣言のことを指します。たとえば、以下のような名前は技術的に public として宣言されていても、パブリックAPIには含まれません:
FooModule.Bar._someMember(value:)(アンダースコア付きのメンバー)FooModule._Bar.someMember(アンダースコア付きの型)_FooModule.Bar(アンダースコア付きのモジュール)FooModule.Bar.init(_value:)(アンダースコア付きの引数を持つイニシャライザ)
また、Sources以外の、の各サブディレクトリに含まれる内容もパブリックAPIではありません。
これらは自由に引用し、自前のライブラリとしてメンテナンスするための「盆栽」としてお使いください。
将来のリリースで内容が変更されたり、削除される可能性があるため、必要な部分をコピーして独自に管理することを推奨します。
さらに、コードベース全般についても同様に、互換性が保証されることは期待しないでください。これらの宣言は必要に応じて変更される可能性があり、非互換な修正が加えられる場合があります。
このライブラリは Apache License 2.0 に基づいて配布しています。
RedBlackTreeModuleは LLVM による実装をもとに改変したものであり、オリジナルのライセンスに関しては
https://llvm.org/LICENSE.txt をご参照ください。
PermutationModuleは swift-algorithms による実装をもとに改変したものであり、オリジナルのライセンスに関しては
https://github.com/apple/swift-algorithms/blob/main/LICENSE.txt をご参照ください。
不具合報告や機能追加の要望は、Issue または Pull Request をお寄せください。
ご利用いただきありがとうございます!